【天体議会】長野まゆみ ★

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 長野まゆみの”星の王子様”と裏表紙の紹介文に書いてあったので、か~るく読んでみた。結論ーどこが!っていうか星の王子様そのものはどういうのだっけ?ということで、とにかく個人的な好みではまったく面白くなかった。
 やたら漢字が多く、読みにくい。いちおうSFの体裁をとってあるので、その未来だか異世界だかの事物を表す手段のひとつとしてだか、言葉に二重の意味を持たせているという作者の”気取り”の顕れだかしれないが、漢字にわざわざ異なる意味を持つルビを振っている。例えば、「自動車」には「ミシュリン」、「高速鉄道」には「カプセル」、「送信機の釦」の「釦」には「キー」という具合。時代と国設定のない異世界の文明と文化をこのような手法で示そうとしているのだろうと想像するが、まあ読みくいったらない。しかしまあ確かに詩的ではある。
 その割に内容は無いよう。ボーイズ・ラブ系の13才の二人の少年とそのひとりの兄17才。そして「自動人形(オートマーク)」のように見える白磁のような肌と端麗な姿形の謎の少年。謎は謎として解かれることはなく、推理は解決すること無く、ただただ、さらさらとすらすらと滞ること無く物語が進行し、そして何の結論も得ること無く終わる。

 詩的な表現力はすばらしい。いくつか本文から引用しよう。
 早朝のシーン:『横に並んだ少年達の影は、斜(ルビは「はす」、以降かっこ内はルビ)に傾いた初秋の朝日を浴びて長くのび、歩道を這(は)ったのち建物の外壁にぶつかって鋭角に曲がった。』
 夕暮れの波止場:『晩霞(ばんか)の天(そら)を出航する船の汽笛が震わせ、波止場を往来する人々のざわめきは呼吸(いき)をのんだように、ひとときだき静まる。しかし、すぐにまた話し声が広がり、たちまちあたりを包みこんだ。特異な抑揚をつけ、語尾を長く伸ばした物売りの声、積載した貨物を降ろす人夫たちの掛け声、足を停めて立ち話をする乗客、繰り返される出航案内。それらすべてがないまぜになったどよめきは、埠頭を走る運搬車(カート)の警笛や、誘導員の吹く笛の音をも取り込み、ひとつの大きなうねりとなって湧きあがった。』
 満月の夜、海洋気象台の上で天を観測する少年達のひとりのセリフ:『「それにしても、見応えのある満月だな。半透明のセルロイドみたいぢゃないか。」』

 これらの引用だけで、本書のタッチが伝わるだろう。
 確かに、”詩”ではあった。

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