【ミレニアム5復讐の炎を吐く女】ダヴィド・ラーゲルクランツ ★★★

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 この小説により北欧小説が脚光を浴びることになった、スティーグ・ラーソンの世界的ヒット【ミレニアム】の続編【ミレニアム5復讐の炎を吐く女】を呼んだ。周知のようにラーソンはこのヒット作を第3巻まで書いた後に死んでしまった。それを引き継ぎ【ミレニアム4蜘蛛の巣を払う女】を(ラーソンの筆致を研究し限りなく似せて)書いたのがラーゲルクランツだ。4を読んだ時にはラーソンと比べて全くの別物で、ラーソンほど面白くもなく興奮もなく感動もない、と思ったが、あれから時間が経ちすぎてご本尊ラーソンのニュアンスをほとんど忘れてしまったので、本作5が果たしてラーソンのレベルと作風に肉薄しているかどうかが判断出来ない。全くの別の作品として楽しむしかなかった。
 前作までの登場人物達の由来に関しては、上記4の題名に加えたリンクを開けば、だいたいの事が書いてある。
 
 さて、本作ではリスベットが前作で、サヴァン症候群の少年を守るため止む無く犯した違法行為により短期に刑務所に収監されているところからストーリーが展開する。
 国の模範であるはずの、その重警備の刑務所では実は裏では、本来のサディスト犯罪者デニートに牛耳られている。デニートに狙われたら者には必ず死が待っているという。同じ刑務所に収監されているのは、イスラムの美しい女ファリアだ。彼女は狂信的原理主義者である兄たちにより、唯一出会った恋人ジャマルを殺されたことに激高し、兄の一人をベランダから突き落としてしまったのだ。デニートはなぜかファリアを攻撃の対象として、酷い暴力を毎日加えるのだ。
 それを見過ごせないリスベットはデニートとの対決を計画する。一方、老齢による不自由な体を押して、リスベットの面会に訪れたリスベットの元後見人であり弁護士であり恩人であるホルゲルからある重要と思われる人物の名前を聞いたリスベットは、もう一人のリスベットの味方、雑誌ミレニアムの編集人ミカエル・ブルムクヴィストにその人物、証券会社の共同経営者レオ・マンヘイメルについて調査するよう依頼する。
 調査が進む内に、双子に関しての学術研究をする謎の機関”レジストリー”の非人道的な暗躍が浮かび上がってくる。レオもどうやらその双子研究の対象だったようだ。それではレオの双子の片割れはどこに?そしてそれはリスベットとその双子の妹・悪の権化であるカミラとも関係している事がわかる。”レジストリー”の秘密を守るためなら人を殺すことすら躊躇しない精神分析学者の女ラケル・グレイツの暗躍により、リスベットの恩人ホルゲルは殺され、リスベットにも魔の手が伸びる。

 家族の一員である妹の自由を奪い、政略結婚の道具として利用しようとし、それのじゃまとなった妹の恋人を殺し、やがて刑務所にいる妹すら闇に葬ろうとするイスラム原理主義の教義を狂信する兄たち、リスベットに強力に痛めつけられたが刑務所外の仲間を動かし脱獄したデニート、そして昔リスベットが痛快極まるやり方でコテンパンにした暴走族集団スヴァーヴェルシェー・オートバイクラブの残党達(このシーンどのようにして?かは覚えてないが、とってもとっても痛快だった事は覚えている。これですっかりリスベット・サランデルに魅せられてしまった)、それと”レジストリー”に属した学者達とその用心棒、裏でつながるこれらの悪の枢軸はあまりに恐ろしくおどろおどろしい。
 それに対する善の連合はこうだ。例によってとんでもないハッキング能力を刑務所の中ですら発揮し、瞬時に凶暴なデニートの戦力を無力化する体術を行使するリスベット、調査を進めるミカエルとその同僚や弁護士の妹の一団、リスベットを尊敬するネット集団であるハッカー共和国の面々、”レジストリー”の悪を暴くべくじっと耐えるレオとその片割れ、事態の複雑さに困惑しながらもなんとかリスベットを救済しようとする警部ヤン・ブブランスキーとその部下達。

 まさに今回はオールスター戦だった。個人的には悪の枢軸の首領とも言うべき、精神科医で精神分析学者のラケル・グレイツの造形がよくは出来ているが、反面その悪に没入するその動機としてはあり得ないな、とは感じた。無理に作った感じ。
 解説によれば第6巻まで出る、というが、恐らく、最終巻では、リスベットとその軍団と悪の権化カミラの枢軸との最終戦になるだろう。こうなると最後まで見るしかない。 
 
 

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