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zoom RSS 【航路】コニー・ウィルス ★★

<<   作成日時 : 2018/10/12 09:44   >>

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 ヒューゴ賞・ネビュラ賞・ローカス賞をばかばかとっているコニー・ウィリスという人の【航路】を読んだ。本書ではローカス賞を受賞している。NDE(NearDeathExperience)=臨死体験を題材としたたっぷり分厚な上下巻だ。題名の【航路】から想像してなにやら壮大な、臨死の旅の物語かな、思ったのだが、だいぶ違っていた。原題は【Passage】=通路だ。その方が内容を的確に表していると思う。
 NDEを研究する認知心理学者のジョアンナは、脳神経科学という面からNDE現象を解析しようとする神経内科医のドクター、リチャードと共同研究を開始する。リチャードは特殊な(*現実には実在しない)薬物を投与すると臨死疑似体験に入れるという、一連の実験を開発したのだ。有志の被験者を募り疑似臨死体験をしてもらい、その際の脳内現象を詳細にモニター(*このモニター機器も現実には存在しない)し、NDEとはいったい何であるか?という研究をしている。ジョアンナはNDEから醒めた被験者がNDE状態の際に、どのような経験をしたかを心理学テクニックを駆使し詳細に聴き取り、分析するという役割だ。被験者に予断を与えるような質問の仕方をすると、被験者の答えが誘導されてしまうので、たいへん気をつかうところだ。
 一方、ジョアンナとリチャードが研究する場を置く、マーシー総合病院には、もう一人のNDE研究者がいる。臨死体験に関する著作でベストセラー作家として有名な、モーリス・マンドレイクだ。彼は、病院の理事長筋の強力な推薦により、病院に常駐し、ジョアンナと同じく不慮の事故や病気により臨死体験を経験した患者と面接し、臨死体験の内容を聞き取るという仕事をしている。しかし、彼の面接は完全に誘導であり、彼に面接された患者達は、”向こうの世界”で、”死んだ家族や親戚に出会い”、”天使を見て”、”帰りなさい”と言われた、とかの、ありもしない超常世界の話と宗教観に毒されてしまい、自分が体験した事に歪曲を加え、尾ひれを付け加えてしまうようになる。
 患者の見た事、体験したことを、臨死状態から覚醒し本人の記憶が新しいうちに脚色せずにそのまま伝えてもらう事に主眼を置き、NDEという現象を科学的な立場から分析しようとするジョアンナは、数少ない臨死体験者の覚醒直後にいち早く面接しようとするのだが、先にマンドレイクに面接されてしまうと、その対象者はすでに使い物にならないのだ。そのマンドレイクがしつこくジョアンナに接触を試み、NDEというものをを非科学的な、いわばオカルト話でまとめようとする側に引き込もうとするのだ。
 ミス・ダヴェンポートなどもその一人で、かろうじてNDEから回復したその直後にマンドレイクの聞き取りを受けたせいで、とんでもない超常体験を吹き込まれてしまい、科学的な調査の対象としては完全に聞き取り対象に無い。にも関わらず、ミス・ダヴェンポートもジョアンナにしつこく自身の臨死体験断を聞いてもらおうと追い回す。
 ジョアンナは、彼らからのコンタクトを受けないよう、なるべく避けるのだが、不幸にしてしばしば出会ってしまい、無駄な時間を取られる。
 ジョアンナとリチャードの実験の被験者達に対するジョアンナの面接により、被験者としての適正に欠けている者がいたり、実験のアポイントメントが極めて取りにくかったり、強固に辞退するものがいたりで、科学実験として有効な被験者がほとんどいなくなってしまう。そこでジョアンナの取った行動は自らが実験台となり、NDEを体験し、その詳細なリポートを作成するというものだ。
 果たしてジョアンナの体験するNDEとは?そしてそれにはどのような意味が?


 それを象徴するのが、彼らの職場、マーシー総合病院だ。大病院の例に漏れなく、(しばしば見られる老舗旅館のように)増築と改築を繰り返し、複数の病棟が複雑極まる連絡通路で連結され、エレベーターを何回も乗り換え、階段を上下し、そこかしこの通路、ナースステーションを行きすぎなければ目的の場所には行けない、というまさに迷路の極みだ。
 ジョアンナとリチャードは病院内の移動をスムースに出来ず、あちこち彷徨ってしまう。ようやく目的のところにたどり着いたと思えば、肝心な相手が不在で、その相手の行き先を求めてまた走り回る。たどり着いたと思えば、避けたい相手に出会ってしまい、時間を空費させられてしまう。
 しかも病院内連絡システムであるポケベル(*今頃ポケベル!時代は2001年の想定なのであり得なくねー)は頻繁に鳴るが滅多に出る事もなく、こちらが鳴らしても相手から返答があることは無い。電話は決まった場所しか無く、ようやく電話の場所に行って相手にかけてみれば相手は不在!
 という、通信と移動の迷走が延々と、描写され、ジョアンナは病院の通路(*まさにPassageだ)を行き来する。入れ違いともどかしさ。それは実は、まさにNDEの時に人の脳内で起こっている事のメタファーなのだ。・・と作者は語りたいのだ。
 そしてジョアンナが、もどかしいさと錯誤と迷走の結果たどりつくNDEの意味とは。それはすなわち作者が本作で提起している仮説なのだが、今それを書いてしまうと、ネタバレになってしまうので書かないが、私に言わせれば超当たり前でしょ、という話で、そのネタを、謎解き話の鍵にもってくるほどの事かな、と思う。
 NDEという現象を、オカルト信奉者の非科学陣営に対して、あくまで科学を追究する主人公達が必死に解明すべく努力する、という構図で語る以上、非科学的で意外な結末、というのは出来ないので、まあ、作者もちょっとハードルが高すぎたな、と思う。
 訳者あとがきで、訳者は『心揺さぶるこの感動的な傑作を、ひとりでも多くの人に読んでほしい』と声を大にして言っているが、う〜むどうだろう?心揺さぶる?揺さぶられない。感動的な?あまり感動しなかった。という訳で多大に”盛りすぎ”では無いだろうか。
 結論から言うと、吉本新喜劇ばりのドタバタが徹頭徹尾続き、ファンタジーもサスペンスも感動もさほどで無いという感じ。(あくまで個人的感想です)

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