【隣の家の少女】J・ケッチャム ★★★

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 胸くその悪さに、いったん頁を繰る手を止め活字から目を離し、次が読みたくない、よくこんな残酷な事を書けるな、と思いつつも、しばし休み結局は元の頁に戻り、読み進み、気が付いたらほぼ一気読みだった。読ませる・・というコンテンツに関しては、文字で綴られた媒体としてはこれほどの引力を持ったものはそうは無いだろう。ホラーとは違う。”怖い”のでは無い。”胸くそがわるくなる”のだ。こんな本をいつも読んでいたら頭がおかしくなりそうだ。という事で衝撃度は満点だが、個人的な評価としては敢えて減点で★三つとした。

 両親を交通事故で亡くし、自らも重傷を負った姉妹、メグとスーザンが隣の家に引き取られて越してきた。隣家チャンドラー家は、夫に逃げられたルースがドニー・ウィリー・ラルフの3人の兄弟と暮らす一軒家だ。
 美しく健やかなメグに一目惚れの12才のディヴィッドは、昔からいつでも好きに出入りしていたチャンドラー家に入り浸る。ルースはまだ若く気のいい、3兄弟の母だし、ドニーとは同い年の親友と言える関係だ。そして、ディヴィッドの住む街は森へと続くどん詰まりの街路の両側に並ぶ10軒あまりの家々で構成された小さなコミュニティで、お互いを知らない子供達はいない。
 そんな牧歌的(この語彙は解説より拝借)で閉ざされた街にメグとスーザンの不幸な姉妹がやってきたのだ。
 メグには腕には事故の醜い傷跡が残るがその美しさを損なうものではない。しかしスーザンは未だに歩行補助具を外せないリハビリ生活を余儀なくされている。
 やがてメグに不穏な空気がまとわるようになる。メグはルースに嫌われ虐待されているようだ。それを感づくが何もできな12才の子供のディヴィッドだ。
 そして、メグに対する虐待は徐々にエスカレートし、メグはチャンドラー家の地下室に設置された古く湿ったかび臭いシェルターに閉じ込められてしまう。相変わらずチャンドラー家に自由に出入りするディヴィッドだが、ルース、そしてルースに加担するチャンドラー家の3兄弟によるメグに対するすさまじい虐待を目にしても、ただただ傍観する事しか出来なかった。
 やがて虐待は目を背けずにはいられない終局に突入していく。
 作者は、その様を下記の数行の1節で説明している。
 『これに関しては語りたくない。
  ごめんこうむる。
  
  話すくらいなら死んだ方がましという事柄があるものだ。目にするくらいなら死んだ方がましという事柄が。
  私はそれを目のあたりにしたのだ。』


 あまりにおぞましく、身の毛のよだつ虐待のシーンはとても人が人に対して成し得る技では無い。

 しかし、しかし、考えて見れば、この平和な日本で、本書に匹敵するすさまじい、子供や幼児に対する虐待事件が、月に一度くらいの割で報道されている。事実はフィクションを越えているのだ。
 虐待は、単なる「暴力」ではなく、常に抵抗できない弱い者に対して行われる。そういうやつらに限って、上位の者の権威にはあらがうことが無く、へつらうばかりのやつらだ。個人的にはそんな卑劣で矮小なやつらは、ハンムラビ法典を適用し、そいつがやった虐待の内容とまったく同じ事をそいつにやってやればいい、と強く強く憤りを込めて思う。すでに死刑の罰を与えるレベルを超えていると思うのだが、読者諸氏はどう考えるだろうか?


 

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