【悪の猿】J・D・バーカー ★★★☆

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 アメリカの新鋭作家、J・D・バーカーという人の書いた【悪の猿】を読んだ。サイコ・サスペンス・スリラー・ミステリと言えるだろう。サイコを帯びた連続殺人犯を追う刑事達、という話だ。これはホントによくあるパターンだ。挙げれば切りが無いくらいだ。犯人は必ず、平気で残酷な事をするが、常に用意周到計画的で持てる知識技術は高く、紳士的だ。まるでスーパーマンのよう。それに立ち向かう訳ありの刑事。まあ、ステレオタイプである。
 しかし本作の特色としては、その残虐具合が半端ない。それと、事態の進展の合間合間に、犯人による日記が小出しされるので、まるで別の事件が進行しているように見えるということだろう。恐らく作者は続編を想定していると思う。
 シカゴ市警を翻弄する連続殺人事件の犯人が走るバスに飛び込んで死んだ。自殺らしい。死んだ犯人の所持品はノートに細かい字でびっしり書かれた日記、足のサイズに合わない高級靴、中折れ帽、75セントの小銭、クリーニング屋の控えなどだ。そして更に黒い帯で包まれた白い箱。その箱には新しい被害者の耳が入っていた。
 日本の日光東照宮に彫られた見ざる言わざる聞かざるの三猿に習い、隠れて悪行を成している人間の愛する者を拉致し、耳、目、舌を切り取り順番に送りつけ、最後には「悪を成さざる」という意味で被害者を殺すという手口で、4猿(4MK=FourMokeyKiller)と呼ばれていたのが、この死んだ犯人だったのだ。
 白い箱に新しい耳が入っていたことは、どこかに今は生きているあたらしい被害者がいて、時間の経過と共に死に瀕していることだ。4MKの事件を最初から追っていたシカゴ市警のポールはチームを率いて被害者を捜索する。
 一方犯人が残した日記には、おぞましくも異常な4MKの11才当時の家族との生活が書かれていた。
 捜査が進展するうちに死んだ犯人の所持品の全てに意味があり、被害者にたどり着くヒントが隠されているらしいことがわかってくる。果たして刑事達は間に合うのか!


 2つの物語が進行する中で、やがて破局と大団円の予兆が高まり、頁を繰る手が止まらず、ほぼ一気に読み切った。キャラ造形も手順通り間違いが無く、飽きずに読み切らせるという”読ませ力”はとても新鋭とは思えない。
 先に書いたように、案の定、結末ではさらなる続編を暗示する終わり方をしているのも周到である。

 文中、明らかに誤植または誤訳があった。
 本書143頁、死んだ犯人の所持品リストのうち、七十五セントの小銭の内容について
   (二十五セント二枚、十セント2枚、5セント一枚)
 とあるところ
 同153頁、331頁、474頁では「十セント一枚」と記載されていて、合計すると七十五セントではなく、六十五セントにしかならない。

 

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