【乱反射】貫井徳郎 ★

画像



 あれっ?貫井徳郎ってこんな温い(ぬるい)作品を書くんだっけ?と思ったら、どうもこの人の作品は読んだことがないのかもしれない。登場人物達の心の動きを丁寧に説明しているのはわかるが、特に感動も呼ばないし、意外な展開ってやつも無い。中盤まで読んでいやな予感がしたが、案の定中盤以降は中盤までの流れをただ逆流しただけだった。
 一応、妻夫木聡、井上真央主演で今年の9月に放送されたらしいし、累計17万部、日本推理作家協会賞受賞とあるが、なんだろう?言いたいことはわかるが、決して、帯にある『あなたはこの衝撃のラストを受け止められるか!』というほどには衝撃を感じなかった。
 さらに言えば、作者の構想をまとめるのに、むりくりな設定をしてしまっている。
 犬を散歩させるのに、糞を拾う動作をすると、腰がビキッときて拾えないのでいつもそのまま放置してしまうジジイが出てくるが、そうであれば、それはもう入院レベルだろう。
 交通量の多い上下1車線づつの道路に面した自宅の車庫入れができなく、とうとう道路を上下ともふさいだまま、車を路上に放置し家に逃げ帰るお姉ちゃんが出てくるが、これはもうどう考えても免許取れないよね。(結果として救急車が立ち往生する)
 あまりに頻繁に風邪をひくので、夜間救急外来に潜り込んで、待ち時間無しに診察を受けるという要領の良い大学生が出てくるが、そんなに頻繁に(毎週ぐらいのいきおいではないかな)風邪ひくならこれはもう一人暮らしは無理だし、だいいち薬をもらってすぐ直ってしまうのがおかしい。しかも、その要領を同じ大学の学生がみんなまねして、その病院の救急外来が若者でいつも混んでしまう、なんてことはあり得ない。大学生がそんなに風邪を引きやすい?(その原因だけではないが結果として、医者は救急患者の搬入を拒否する)
 超潔癖症のまじめな男は、街路樹の梺に放置された犬の糞に近寄れなく、自らの仕事の街路樹診断を、その木だけ怠ってしまい、よりによってその木がまさかの根腐れしていて強風に倒れてしまうのだが、仮にちゃんとその木を診断したとしても、即倒木に至るということは予見できなかろうし、仮に予見できてちゃんとしかるべき所に報告したとしても、街路樹を管理する市の道路管理課が街路樹を切る、という決裁をするまでに相当の時間(少なくとも数ヶ月)を要するだろうし、そうなるとすでに事故の因果関係が超薄まってしまう。第一、糞があるぐらいで木に近づけないような、かなりな病的レベルの潔癖症であれば、おそらくまともな社会生活自体が不可能だろう。実際に男の家庭生活はそのように描かれているのに、樹木医という自らの仕事だけは一応(手袋をするとは言え)、会社員として全うしているのは明らかにおかしい。(事務仕事もあるだろうし、トイレも行くだろう、昼飯も喰うだろう。それなのにいつも手袋しているのか?それに何でもしつこく除菌ティッシュで拭かないでいられない病的生活は会社ではどうする?)

 人々のそういったか~るいちょっとした、ルール違反、マナー違反が連鎖した結果として、強風の吹く日に突如木が倒れ、2才の男の子が死に至る、という悲劇を作者は描いているのだが、あまりにむりくりがひどくて、鼻白むばかりだ。
 不可である。

 

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック